芸術ってなんだろう その2 岡倉天心「茶の本」を読んで
ちょっと前に「芸術」に関する記事を書いた。
一言で要約すると「芸術とは、人と人とのつながりを感じさせるもの」と結論付けたわけだが、岡倉天心、『茶の本』の一説を読んで、こうアップデートできるなと感じた。
・芸術とは、人と人との間に精神的な深いつながりを感じさせるもの
『茶の本』の一説をご紹介しよう。
われわれの心に訴えるものは、伎倆(ぎりょう)というよりは精神であり、技術というよりも人物である。(第五章 芸術鑑賞)
ここでは、芸術において大事なものは人物=精神なのだと書かれている。
「何を描くかか」「どう描くか」というのはもちろん大事ではあるけれども、それはつまるところ表層に過ぎない。本当に大事なものは、裏側に流れる精神であると言う。
人とつながりを感じるということは、表面的なつながり、例えば好きなものが一緒だったりすることはあるけれど、真に感動するのはもっと深い、精神のつながりである。
これはもう、その通りだと思う。
ちなみに「茶の本」は、「茶」の本ではあるけれども、茶は禅から成り立っているので「禅」の本でもある。
禅の世界はそもそも精神世界を指向するものなので、西洋芸術はまた違った定義になる可能性はある。
例えばパトロンが権威を誇るために描かせた絵画が、人と人との精神的なつながりを生む、とはなかなか考えにくいことだ。