つながることの幸福
他愛もない話をしていて、ぼくはときに、涙が出てくるときがある。
それは「この人と分かり合えた」と思えたときなのだと思う。
人と人は本質的には分かり合えないものだ。
悩み、価値観、未来。個人を形作る「芯」としての部分は、えてして抽象的だったりする。
しかし人間は、言葉であったり絵であったり、具体的なものでしか伝えあうことはできない。
ここに、人間が分かり合うことの困難さが、矛盾が、苦しみがある。
それでもときに、その人の「芯」に到達できることがある。
別々の個体であるアナタとワタシが、どこかで共通していると実感することがある。
それは突然、神経回路がつながるように、視界が開ける感覚として起こる。
まったく別々のものだと思われていたものが、ある一面では、実は同じものであったのだと思うことができたとき、ぼくはそれに、とてつもない幸福を感じる。
表層の裏側に、共通項を見出すこと。
それが、幸福の本質なのではないか。