かつ消えかつ結ブログ

日々、ポッと浮かんだ考え事を書く遊び場。哲学風味。

喫茶店の会話から読み解く 新入社員の精神性

茶店にて、新入社員の男性と、先輩社員らしき人との会話が聞こえてくる。

・「あれ?健康診断って明日からじゃないっけ?」
・「オレ、もう終わったっすよ」

後者が新入社員である。
面白い。20代前半の人を観察する機会はなかなか少ないので、ちょっと分析させていただいた。

まず、上の会話にもある通り、新入社員の人は敬語使いが発達していない。

おそらく、これまで同世代としか触れ合ってこなかったのだろう。もしくは上の世代と触れ合っていたとしても、注意をされてこなかったか。

注意をするにもエネルギーがいるし、自己責任論がまかり通る世の中だから、人に対して無関心になる。注意されるという体験は、今や希少なものになっている。

 

・「教会とか、観光スポットに行きたい奴、いるじゃないですか。バックボーンを知らないのに、行ってどうするんだと思う。オレはヨーロッパに行ったことがないから行ってみたい」

ヨーロッパに行ったことがないから行きたい、という観光客としての態度。それは素晴らしいものだ。成熟し、専門化された世の中では、知らないから行く、という気楽さはこれからますます重要なものになっていく。

しかしそれでいて、観光スポットに行きたい人は否定する。まったくもって矛盾しているじゃないか。

でも、彼の言いたいことはなんとなくわかる。彼の心の声を想像してみると、「観光スポットに行きたいような思考停止のミーハー野郎とは一緒にされたくない」ということだろう。つまりは、架空のミーハーを貶めることで自分の価値を相対的に高めている。

これは「自分は社会的な価値を持っていない」と自己認識している人(特に若者)によく見られる現象である。弱い犬ほどなんとやらということわざが胸に突き刺さる。

 

・「親友が多くて、知り合いは少ないんですよね」

「親友が多いこと」に価値を見出しているのが一つ。同時にうわべだけ付き合っている(と本人には見えている)人たちを馬鹿にし、相対的に自分の価値を高めようとしているのが一つわかる。

アイデンティティの軸足は完全に「親友」というコミュニティにあり、そこから出てこようとはしない新入社員。先輩社員という「社会」を相手にしているにも関わらず。

これも、同世代のコミュニティでしか生きてこなかったことによる、別の文化を持つコミュニティへの脊髄反射的な反発だと見られる。内向き志向がはっきりとわかる。

 

・「あのゲームやってるの?おれも好きなんだよね」
・「あのゲーム、面白いっすよね」

ゲームの話になると声色が明るくなる。自分の土俵に相手が入ってきてくれて、少しだけ心を許したようだ。

先輩社員はさすがの対応。自分の殻から出てこない人に対しては、相手の土俵に入ってあげることが有効な一手だと知っている。古今東西、自分の殻に閉じこもる人は存在してきたが、彼らと対話するにはその方法しかないのではないか。強硬策はいっさい通じず、むしろ殻を分厚いものにしてしまう。