シャイボーイと結婚
ぼくの友達に、シャイボーイがいる。
あるとき彼が恋愛関係で落ち込んでいて、女性と話すことを慣れさせるために(なんか偉そうだが)ガールズバーにいったことがある。
そこでぼくは驚愕した。
女性と話しているときの彼は、ぼくの知っている彼ではなかった。
いわゆる「仮面」をかぶっていたのである。
仮面とは何か、という話をすると、
それは他者からみて、または状況からみて、「その場に適しているだろう、と彼が判断した仮の人格」のことである。
さらに、その人格が持つ要素が「彼の中にはないもの」である必要がある。
仮に彼の中にある要素を増幅、または誇張して表現したものであれば、それは仮面とは言えない。感覚的に言えば、仮面をかぶっている状態は、無理をしている状態のことを指す。
さて、彼は早くに結婚したほうがいいタイプだと僕は思っている。
だから彼が結婚できる手助けを、できる限りしようと考えている。
そこでぼくができることは何か。
それは、まずは「仮面」を何とかして脱いでもらう、という点にあるのではないか。
なぜなら結婚とは、他者と長い時間をともに過ごすことだから。
長い時間を過ごす人間と接するとき、常に「仮面」をかぶっていることは現実的ではない。
たまに「結婚したら人が変わった」というゴシップ記事が出て、離婚の原因うんぬんが語られるが、それは結婚するまでその人が「仮面」をかぶり続けていて、それを相手も見抜けなかったことに、不幸がはじまっている。
なぜ人は仮面をかぶるのだろうか。
ひとつは、自分に自信がないからだろう。
これは根が深い問題なので、短期間でかんたんに変えることはできないが、つらい人生を送りたくなければ長期的に取り組んでいかなければいけない問題である。
もうひとつは、経験値がないから、だと思う。
経験値がなければ相手の反応はわからない。
だから自分の「素」でいくよりは「仮の自分=仮面」でいったほうがマシ、という考え方も出てくるし、また、その方が自分が傷つかない。そこに仮面をかぶることの必然性が生まれる。
ここで、自信と経験値は大いに関係があることに注意したい。
自信がないから新たな経験に踏み出せないし、経験値がないから自信を持つことができない。
つまり、トレードオフの関係にあるのだ。
しかし、経験値を得ることは、自信を持つことに比べれば短期的にできる、という特徴がある。
彼が変わるとすれば、経験値を得ることからしかないだろう。
そんな彼は、同じくシャイな友達と一緒に街コンに行ったらしい。
それを聞いて、彼の夜明けは近い、とすこしは晴れやかな気持ちになった。